エビデンスレベルとは?治療を選ぶ前に知っておきたい医学情報の信頼性

著者:薬剤師 笹森有起

医療や健康情報に触れていると、「エビデンスレベル」という言葉を目にすることがあるかもしれません。 これは、「その情報がどれだけ信頼できるか」を示す指標のことです。

医療の世界では、治療や薬の効果を科学的に検証し、安全かつ有効であることを確認する必要があります。 しかし、すべての情報が同じ重みを持つわけではありません。研究の方法や規模、結果の一貫性によって、信頼性は大きく変わります。 そこで、情報の質を評価するために「エビデンスレベル」という考え方が使われています。

なぜエビデンスレベルが重要なのか?

医療の現場では、患者さんにとって最善の治療を選ぶ必要があります。 そのためには、できるだけ信頼性の高い情報に基づいて判断することが欠かせません。 エビデンスレベルを知ることで、「どの情報を重視すべきか」「どれくらい慎重に受け取るべきか」を見極める助けになります。

エビデンスレベルの分類

エビデンスレベルには、いくつかの段階があります。 一般的な分類については、以下の図をご覧ください。

このように、より厳密な方法で行われた研究ほどエビデンスレベルが高いとされます。

エビデンスがあると言われる研究は、前向きの研究であり、かつ治療する群と治療しない群をくじ引きで割り当てる臨床試験です。前向き臨床試験では、あらかじめ治療する群としない群が定められ、それを時間経過で追うため、治療を行う群と行わない群を過去のデータから解析する後ろ向き試験よりも信頼性が高まります。

また、なぜくじ引きが大切かというと、治療を受けるかどうかの決定に関して生じる偏り(バイアス)を減らすためです。たとえば、年齢、性別、病気の重さ、生活習慣などの違いがあると、それだけで治療の効果に差が出たように見えてしまいます。個人の意思や背景によって治療群と非治療群に偏りが生じると、治療効果の評価が歪められてしまう可能性があります。くじ引きによる割り当ては、そうした偏りを最小限に抑える方法として非常に重要です。このようなくじ引きによる割り当てを行った研究を、ランダム化臨床試験(Randomized Controlled Trial:RCT)と呼び、信頼性の高いデータと考えることができます。

症例数も重要な要素

臨床試験の信頼性を高めるためには、研究の方法だけでなく、症例数も重要な要素です。

症例数が少ないと、たまたま起こった現象(偶然の影響)が結果に大きく作用してしまう可能性があります。そのため、十分な数の症例を集めることで、より一般化できる確かな結果が得られると考えられています。

つまり、信頼できるエビデンスとは、前向きに計画され、くじ引きで群分けがなされ、かつ多くの症例数をもとに導かれた結果だといえます。

1000例規模のランダム化比較試験(RCT)で抗がんエビデンスが証明されたフアイア

フアイアは、がん、免疫異常に関与する様々な疾患に対して、医薬品と同等のエビデンスを持っています。さらにエビデンスの質が非常に高く、権威のある医科学ジャーナルに掲載され、世界的に高く評価されています。

例えば、2018年に一流医学誌「Gut※1」に掲載された論文※2は、

・1000名規模の患者を
・くじ引きで2群に分けたRCT(ランダム化比較試験)

の大規模臨床試験です。

この試験において、肝臓がん手術後の患者に対しフアイアを投与し観察した結果、96週間後に「フアイアを服用した群」は「服用しなかった群」に比べて、明らかな有意差を持って無再発率、生存率に効果があることが示されました。

※1 Gut…消化器系医療学術ジャーナルとしては世界最高峰の権威を持つ。IF(インパクトファクター)=31

※2 Effect of Huaier granule on recurrence after curative resection of HCC: a multicentre, randomised clinical trial (肝細胞癌根治切除後の再発に対するフアイアグラニュールの効果:多施設ランダム化臨床試験)

その他にもフアイアは、乳がん・乾癬・IgA腎症といった疾患においてもRCT論文が報告されています。

信頼できる医療情報を見極めるために

エビデンスレベルは、医療情報の信頼性を見極めるための重要な指標です。 特に、前向きに計画され、治療群と非治療群をくじ引きで分けるランダム化比較試験(RCT)は、バイアスを抑えた公平な検証が可能となります。 さらに、十分な症例数を伴った試験であれば、その結果の再現性や信頼性もより高まります。

こうした観点から、どのような研究によって得られた情報なのかを意識することで、治療法を選ぶ際の判断材料として、より客観的な視点を持つことができます。

科学的な裏付けに基づく医療選択のために、エビデンスレベルを正しく理解し、活用していくことが大切です。