「がん」を、もっと身近に。フリーマガジン『+More ME(プラスモアミー)』を創刊しました。

<執筆者>

笹森有起

薬剤師、漢方薬・生薬認定薬剤師

日本薬科大学 非常勤講師
『看護展望』にて看護師向け漢方記事を担当

「がんになったと伝えた瞬間から、周りの空気が変わった気がした」

アフキャン提唱者のゆりきゃんさんが、ご自身の経験をそう振り返ってくれました。心配してくれているのはわかる。でも、なんとなく距離ができてしまう。腫れ物に触るような空気になる。「かわいそう」という目で見られる。

がんと診断された瞬間から、その人の「日常」が変わってしまう。治療だけでなく、人間関係も、自分の見られ方も。

この話を聞いたとき、私はハッとしました。医療の外側に、私たちがまだ見えていない世界がある -と。

2人に1人が経験する時代に、なぜ「遠い話」のままなのか

日本では生涯でがんに罹患する確率は2人に1人と言われています。もはや誰にとっても他人事ではない。にもかかわらず、「がん」という言葉はまだどこか特別なものとして扱われています。

知ることで、距離は縮まります。がんについて詳しくなる必要はありません。ただ、その人がどんな気持ちでいるか、日常の中で何に困っているか、少し想いを馳せるだけでいい。それだけで、周りの人の関わり方が変わる。経験者本人の気持ちも楽になる。

「想像できる社会」は、きっと生きやすい社会です。

※国立がん研究センター「最新がん統計」(2023年データ)より。生涯罹患リスクは男性61.1%、女性50.1%。 出典:https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html

医療にできること、できないこと

クリニックとして正直に言います。保険診療でできることには、限界があります。

標準治療は、集団として統計的に最も効果が高いとされる治療法です。命を守るために最善を尽くしてくれる、それは間違いありません。私自身も、標準治療は第一に検討すべきと考えています。しかしその性質上、フォーカスされるのは「病気」であり、目の前の「あなた個人の日常」ではありません。

「治療が終わった後の日常をどう生きるか」「再発への不安とどう向き合うか」

-そういった問いに、医療は必ずしも答えを持っていません。

患者さんが抱える悩みは、診察室の中だけでは解決できない。それが、私たちクリニックが「治療の外側」に目を向けるようになったきっかけです。

なぜ、あえて今マガジンを届けるのか?

私たちが本当に届けたいのは、「納得できる選択肢」

がん経験者の方が「自分で納得して、自分の人生を選択できる」状態になることです。治療のこと、生活のこと、お金のこと。情報を知り、選択肢を知ることで、自分に合った道を自分で選べるようになる。

そうやって視座が高まった方は、自然と「何が本当に自分に必要か」がわかってきます。私たちは、その延長線上に生薬フアイアが存在していると信じています。ただし、それはあくまで選択肢の一つです。選ぶかどうかは、あなた自身が決めることです。

押しつけない。でも、知ってほしい。それがこのマガジンの立ち位置です。

「アフターキャンサー」という考え方

冒頭でご紹介したゆりきゃんさんは、ご自身のがん経験をきっかけに「アフキャン(After Cancer)」という概念を提唱しています。がんを人生の中心に置くのではなく、人生の主語をいつも「私」に戻す、という考え方です。

がんの経験を「かわいそうなこと」ではなく、自分らしく生きるための文脈として捉え直す。その視点は、私たちクリニックが目指している「患者さんのQOL向上」ともぴったり重なりました。

がんを経験した後も、人生の主語は「私」であり続ける。その当たり前のことを、当たり前に言える社会にしたい。そんな想いが、このコラボレーションの出発点です。

フリーマガジン『+More ME』とは

『+More ME(プラスモアミー)』は、ゆりきゃんさんと私たちフアイア内服免疫クリニックが共同で制作したフリーマガジンです。B5サイズ・全16ページ・無料でお読みいただけます。

がん経験者だけでなく、そのご家族や周りの方にも読んでいただける内容にしています。当事者のリアルな声をもとに、暮らしの悩みの背景を丁寧にひもときながら、それを乗り越えるためのサービス・アイテム・生き方を紹介していきます。

「これが正解」とは言いません。私たちが提示するのはあくまで「選択肢」です。知ることで、自分で選べるようになる。そのための一冊でありたいと思っています。

創刊号のテーマは「入浴と、私らしさと。」

創刊号では「入浴」にフォーカスしました。

「温泉に行きたいけど、傷あとが気になる」「入浴着を着ると逆に目立ってしまうのでは?」——そんなリアルな声に寄り添いながら、入浴着という選択肢や、それを広めようとする人々の想いを深掘りしています。乳がん経験者の方と特に親和性の高い内容ですが、「誰もが気兼ねなく温泉を楽しめる社会」を考えるきっかけとして、広く読んでいただける内容になっています。

全国の医療系サロン・イベント・クリニック・温浴施設などで無料配布しています。お近くで見かけた際はぜひ手に取ってみてください。

設置・配布にご協力いただける施設の方、また掲載をご希望の方は下記よりお気軽にご連絡ください。

※創刊の経緯についてゆりきゃんさん・新見先生と対談したYouTubeも近日公開予定です。
合わせてご覧ください。(公開後リンクを追記します)

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